【映画『正欲』レビュー】「多様性」とは一体誰のもの?他人から理解されにくい人が生き延びるために選んだこととは……

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横浜で検事をしている寺井啓喜(稲垣吾郎)は、事件を起こした犯人と対峙する日々の中、法に則ったもの、そして、世間がよしとする価値観を正しいものと信じていた。
そのため、不登校になった小学生の息子が、学校へ行く代わりにYouTuberとして活動していることも理解できない。

一方、広島にいる桐生夏月(新垣結衣)は、人には理解し得ない嗜好を持つため、他人と深く繋がることが難しく、地元のショッピングモールで働き、地味に暮らしていた。
そんな中、彼女の中学の同級生で、横浜に転校した佐々木佳道(磯村勇斗)が、両親の事故死をきっかけに広島へ戻ってきた。
それを知り、動揺する夏月。というのも、佐々木は唯一、同じ嗜好を持つ仲間だったからだ。
とある出来事をきっかけに佐々木と再会した夏月。生き延びるために、ある決断をし、2人で横浜へ。

大学生の諸橋大也(佐藤寛太)は、大学で準ミスターに選ばれたこともあり、ダンスサークルでも目立つ存在。だが、決して心を開かない人物だった。
学園祭の実行委員として、彼と関わることになった神戸八重子(東野絢香)。普段だったら男性を前にすると体調が悪くなるはずが、彼と一緒にいてもそんな症状が出ない。そのことを不思議に思い、彼に近づくが拒否されてしまう。
というのも、大也にも他人には理解されない、それゆえに誰にも言いたくない嗜好を抱えていて……。

夏月が佐々木に向かって
「地球に留学してるみたいなんだよね」
と言うシーンが印象的だった。

というのも、私自身、あれこれ悩んでいて、何かヒントが欲しかった20代の頃、知人に教えてもらった占い師に「あなたは宇宙人だから」と言われたからだ。

私は何か人には理解され得ない趣味があるわけではないけど、
人から理解されないと感じることがままあって、「宇宙人」という言い方はおもしろいけど納得のいく表現だった。

だから、映画のセリフに「地球に留学」と聞いて、「私もそうかもしれないな」と思った。

それで、夏月や佐々木とは真逆のキャラクターである寺井を見て感じたのは、
結局、多様性とか言いながら、容易に理解できないことは、彼のように受け止められない人が多いこと。

別の場面でも同じことを思った。
それは、大也が
「企画に沿うために自分の踊りたくないジャンルのダンスを踊るのって、それこそダイバーシティーじゃないんじゃないですかね」
と毒づくシーンがある。

「多様性」とか言って、表向きはなんでも受け入れるフリをして、結局想像したこともない価値観に出会うと簡単には受け入れられない。
そして「多様性」という言葉を武器に、人の行動まで制限する。
一番、「誰かに理解してほしい」と思っている人は、結局理解されていない世の中なんだ……。

耳障りのいい言葉の裏にある皮肉をこの作品では描いているのだろう。

ちなみに、夏月と佐々木は生きづらい世の中を生き抜くために、協力することになる。
その姿を見て、「そうか、仲間がいれば、なんとかうまく生きられるんだ!」と感じた私。それと同時に、それはだいぶ前に心の奥底に閉じ込めていた願望だったことを思い出した。

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作品概要

タイトル:『正欲』
公開日:2023年11月10日
キャスト:稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香、山田真歩、宇野祥平、渡辺大知、徳永えり、岩瀬亮、坂東希、山本浩司
原作:朝井リョウ
脚本:港岳彦
監督:岸善幸
動画配信:Amazon Prime Videoで見るU-NEXTで見るNetflixで見るHuluで見るFODで見る
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/a-man/

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