2021年10月8日〜12月24日の金曜24:12よりテレビ東京で放送していたドラマ『スナック キズツキ』。
益田ミリの漫画が原作。主人公であるお酒を置いていないスナックのママを原田知世が演じた癒し系ドラマ。
この作品のあらすじ・レビューを書いた記事です。
人の都合ばかり優先して疲れた心を癒やすには? 1話
あらすじ
通販のコールセンターでお客様対応の仕事をしている中田さん(成海璃子)。
今日は商品である家具の不備で問い合わせを受け付け、返品・交換の手続きをしようとする。すると、相手は以前対応したことのある人だった。
長くなりそうな予感がした途端、相手は「組み立てたのに返品?」と不機嫌に。
しかもそんな時に限って、交換したい家具の在庫が切れている。
交換する新品の家具はいつ送れるかわからないと伝えると、上司に代われと言われてしまう。
そんな上司からも「なんとかそっちで対応して」と言われてしまったので、上司は席を外してると伝えるとガチャ切りされてしまった。
その日の夜。2年付き合っている彼氏・潤(小関裕太)と会うことになっていた。
ただ仕事が立て込んでいたようで、待ち合わせ場所の居酒屋に遅れて来た彼。
料理は彼が来てから頼もうとお腹を空かせて待っていたのに、「夕方に食べちゃったからあんまりお腹が空いてない」と言う。
中田さんは少しカチンときたものの、彼の好きなイカ刺しやだし巻き卵を勧めてしまう。
そしていざ注文のときに潤がイカ刺しとだし巻き卵のほかにも頼みたそうな素ぶりをしていたので、かた焼きそばとか少し重めの食べ物頼まないかな……と念じていたが、追加で頼んだのはもろきゅう。
翌日、潤は友人の誘いで早朝からバーベキューへ行くことになっていたので、この日はこれで解散。
仕事といい、彼といい、なんか疲れてしまった中田さん。
ぼんやり歩いていたときに、なんとなく惹かれて「スナック キズツキ」に入る。
そこは、ママのトウコ(原田知世)が切り盛りするお酒を出さない不思議なスナック。
レトロ喫茶のような店内、トウコの出すソイラテとキーマカレーにすっかり魅せられ、ほっこりした中田さん。
なごんでいた矢先に、トウコから自分が思い浮かんだことを歌う即興のカラオケに誘われて……。
レビュー
一つひとつは我慢できるけど、それが積もりに積もると怒りが爆発しそうになったり、どっと疲れてしまう出来事。
誰にでもこういう経験はあるはず。
その愚痴をキズツキのママが最初から白々しく聞き出すわけではない。
お客さんが飲みたい飲み物と、おすすめの料理を出して癒していく。
と思いきや、なぜか音楽。
なぜか即興。
そういう感じで、キズツキはかなり変化球でお客さんが愚痴を吐き出せるシステム。
だから傷ついた人だけがたどり着けるスナックなのかも。
そんな奇天烈な場所で笑っちゃうんだけど。
でも中田さんがその日に感じた不満を歌っているのを聴いていたら、私が体験したことではないのに、彼女と同じようにイラッとしたことが浄化されていく気分になるのが不思議。
クスッとしたのが、歌詞の中で、なんでアドバイスしたもの以外で彼が注文したものがよりにもよってもろきゅうなんだと、普段あまり声高に怒らない中田さんが怒っていたこと。
そして彼は自分のことばかり話してきて、私のことは聞いてくれないと不満が爆発。そんな彼を「『徹子の部屋』のゲストのつもりなの?」と表現していたところなんて最高。
しかし、中田さん見ていて改めてわかるけど、つい相手の都合を優先してばかりいると、モヤモヤってたまるのだな。
トウコさん提案の即興カラオケがいいかどうかわからないけど(笑)、このシーンを見てるだけでこっちもスッキリしてくる。
自分も中田さんみたいなストレスがたまったときに、もう一度、今回のストーリーを見返してみよう。
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主張ばかりの人に振り回されないようにするには? 2話
あらすじ
前回、通販のコールセンターでクレームを入れていた安達さん(平岩紙)。
彼女も中田さんと同様、普段はなかなか自己主張ができないタイプだった。
職場はデパートのお惣菜売り場。
お客様に言われたグラム数を量って売るのだけど、切れ端みたいな揚げ物が多いから変えてほしいとか、言ったグラム数ちょうどにしてほしいとか主張されてばかり。それに、イラッとしても応えてきた。
しかもそんなお客様の要望が強かった日に限って、パート仲間の野口さんからは急に翌日のシフトを代わってほしいと言われる。
子供の塾の面談が入りそうで、明後日にずらすと下の子のお稽古とかぶるから……とのこと。
安達さんは歯医者の予定があったのに、ずらせないかと野口さんから打診され、渋々翌日のシフトを引き受けることに。
そして帰りのバスでは隣に座ったサラリーマン(塚地武雅)が大股を開いて座っていたせいで、窮屈な思いをする。
「なんで私ばっかり損しているんだろう」
そう思った安達さんは、なんだか真っ直ぐ家に帰りたくなかった。
街をふらふらして偶然見つけたのが「スナック キズツキ」。
お酒を置いていないスナックというのは珍しいと思いながらも、ママのトウコ(原田知世)が作ったラッシーがおいしい。それに居心地のいい空間でほっこりした気分に。
その最中、野口さんからメッセージが。
子供の塾の面談が来週になったので、明日のシフトは自分が入るという連絡だった。
歯医者の予約もすでにキャンセルしてしまったし、なんだかモヤモヤ。
とはいえ、野口さんに自分の気持ちをはっきり言うこともできず、さらにモヤモヤ。
思えば子供の頃から、都合のいいことばかりいう人に振り回されてきた。
そして、今度こそはっきり言おうと思って何も言えなかった。
せっかく和んだ気持ちが一気に冷めてしまった安達さん。
その気持ちが伝わったのか、ミネストローネを出すトウコ。
ミネストローネの温かさにまた気分が落ち着いた安達さん。
そんな彼女をトウコはピアノの演奏に誘う。
トウコが弾き語りをすると、それにつられて安達さんも歌いながら今までの鬱憤を吐き出すが……。
レビュー
1話で中田さんに注文品のクレームをつけていた安達さん。
なんでこんなに怒りに怒りまくっているのかと思ったら、いつもは不満に感じたことを言えずに我慢しているタイプだった。
だから、自分が主張していいと許されたと思った場面(商品のクレーム)ではあれこれ言っていたわけね。
前回は中田さんを責める嫌な奴に映っていたけど、安達さんの背景を見るとクレームで怒り狂うのも理解できる気がする。
ちなみに安達さんがまわりに振り回された出来事の中で特にイラッとしたのは、パート仲間の野口さん。
シフトの話だけでなく、売り物で余ったお惣菜を持ち帰っていいとなったときも、最初は安達さんに譲っておきながら結局自分が好きなお惣菜を持って帰っていたし。
とはいえ、一見調子のいいことばかり言って人を振り回しているように見える野口さんにも、きっとそうせざるを得ない事情があるのかもしれない。そう思うと、あんまり強く言えないよね。
でもやっぱりモヤッとする。
その不満のせいで疲れた心をトウコさんが作る飲み物と料理がそっと癒してくれる。
今回のミネストローネもおいしそうだった。
あと、音楽。
なぜかあの空間にいるとトウコさんのペースに乗せられて弾き語りをしてしまうのはわかる気がする。
しかも普段言えなかったことを歌詞にして。
おもしろいなと思うのは、不満を会話の中で吐き出すとすごくきつく感じるのに、歌に乗せるとマイルドになる。
聞いているほうも素直に受け止められるし、きっと歌ってるほうも普通に愚痴を言うよりヒートアップせずに済む。それに加えて、もっと客観的に自分の不満を見られるようになる気がする。
だから、ふとコールセンターで怒りまくったことを思い出して、自分はそんな人間じゃなかったはずだと安達さんが冷静に振り返ることができたってことだよね。
冷静になれたからか、最後、パン屋さんでいいことがあってよかったなぁと思った。
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人生の成功って他人が決めるもの? 3話
あらすじ
前回、バスに乗っている安達さん(平岩紙)の横で大股を開いて座っていたサラリーマンがサトちゃん(塚地武雅)。
独身で実家暮らし。お酒が苦手。
自分自身、それに特に不満はないと思っていたはずだった。
仕事が終わり家に帰ると、母( 丘みつ子)から妹の息子が京大に受かったからお祝いをあげるという話に。
近いうちに妹が家にくるからお祝いを用意しておきたいのに祝儀袋がないと母が騒ぎ出す。
その姿を見かねて袋を買ってくるとコンビニへ向かうサトちゃん。
祝儀袋をレジに出し、会計を済ましているときにふと、最後に自分がお祝いされていたのがいつだか考える。すると、それは就職のときだったと思い出す。
それ以来、何も祝われることがなかったのかと急に虚しくなったサトちゃんはなんとなく真っ直ぐ家に帰る気になれない。それで歩いていると「スナック キズツキ」を見つける。
「お酒を置いていないスナック」という説明に興味が湧き、入ってみる。
コーヒーを注文すると、ママのトウコ(原田知世)と旅の話題で盛り上がる。
会社へ入る前にした鉄道の旅が楽しかったことを思い出すと同時にそれから約28年も会社にいることに気づき、ふと我に返る。
後輩には出世で負け、部下(小関裕太)からはバカにされている現実に再び虚しさがこみ上げてくる。
その空気を察してか、トウコからストリートビューでのフィンランドの旅に誘われる。
見ているうちに、トウコがフィンランドはエアギターが有名という話をしはじめ、今度は一緒にエアギターをやろうと誘われ……。
レビュー
今回も「スナック キズツキ」に入ったメインキャラがトウコさんに演奏を誘われ、最初は渋々なのにいつの間にかノリノリになっているという……。
今回のストーリーのメインキャラであるサトちゃんは、自分の中では自分の人生が失敗だとも不満だとも思っていない。
でも、酒が飲めないから同僚からは誘われないし、後輩には先に出世されるし、部下の若手社員からは仕事ができないと思われている空気を感じるし……。
こうやって会社の人間(世間一般)の目線で自分を見ると、まるで自分は成功していない人のように思えてしまう。
それが不満。
そう。世間はそう思うだろうなという価値観を気にしてしまうと、そこからはみ出た途端、自信がなくなったり、まるで人生が成功していないみたいに感じる。
だから、サトちゃんがエアギターで「人生の成功ってなんだ!」「それじゃあ、人生は商売みたいじゃねぇか!」と叫んでいるのがとても刺さった。
人生が成功しているかどうかなんて商売のように語られるものではない。それに成功しているかいないかは他人が決めるものでもない。
自分が不満でなければそれでいいんだ。
最後、サトちゃんがスッキリして帰っていたのがよかった。
私も彼のエアギターによる魂の叫びにスッキリした。
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お金持ちの利点って何? 4話
あらすじ
1話目の中田さん(成海璃子)の彼氏で、3話目のサトちゃん(塚地武雅)の部下である瀧井潤くん(小関裕太)。
中田さんの話は聞かず、サトちゃんには仕事のできない上司という目線を送れるほど自信にあふれているのかと思いきや、彼もまた何気ない出来事に傷ついていた。
中田さんと食事に行った翌日。
高校時代の同級生が免許を取り立てなので運転が不安だからと、運転手役も兼ねて彼女が参加するBBQへ。
その同級生が通っていたダイビングスクールの社長が主催するBBQは、セレブな人ばかりで瀧井くんは居心地の悪さを感じていた。
しかも同級生が連れてきた友人も実家はビル持ちで会社経営をしているお金持ち。ただ本人は実家の会社に勤めるつもりはなく、語学に興味があるので近いうちに留学するとのこと。
自分の場違い感に辟易していた瀧井くん。
しかし、知りもしないシャトー・マルゴーでセレブたちが騒いでいて、ついその同級生の友人の前で知ったかぶってしまった。
BBQから帰ってきて、あの場に自分がしっくりこなかったことにモヤモヤして石を蹴っていた瀧井くん。するとその石が「スナック キズツキ」の看板に当たってヒビが入ってしまった。
彼は謝るために慌ててお店に入る。
するとママのトウコ(原田知世)からそれよりも電球を取り替えるのを手伝ってほしいと言われ、コーヒーまでごちそうになる。
そして、瀧井くんのモヤモヤを察知してか、トウコが即興の朗読へ誘う。
最初は遠慮していた瀧井くんもいつの間にか乗せられて、今日のBBQのことや学生時代の自分のことを朗読に出てくる主人公に投影してストーリーを語り出し……。
レビュー
トウコさんが『ノルウェイの森』の一節を紹介しているところが印象的だった。
それは、お金持ちの利点は、お金がないって言えることという話。
瀧井くんはそれを聞いて、お金がなくて希望の大学を諦めたのに、「お金がなくて諦めた」と言ってしまうと惨めになりそうで同級生に言えなかった高校時代を思い出す。
そしてBBQでもワインの銘柄を知ったかぶりをしてしまった。
それなのに、同級生のお金持ちの友人は「知らない」と正直に言っていた。
しかもその彼女は、てっきり家業を継ぐという一択しか選ばない(選べない)のかと思いきや、留学という別の選択肢を選んでいる。
瀧井くん自身の経験から感じたお金持ちの利点は、正直にあるない、知っている知らないと言えるだけでなく、選択があるということ。
でもそれと同時に、お金持ちの利点なんかなくても自分には幸せな時間があったことを瀧井くんが思い出したところがよかった。
貧しいながらも自分を一生懸命育ててくれた母と他愛ない時を過ごしたこと。
何かと自分を気にかけてくれる年の離れた兄との時間。
そんな瀧井くんの気づきと、なんだかんだこれまでの自分を肯定できた感じがすごく清々しく感じた。
ちなみに、焼き肉といえば、外でBBQではなくてホットプレートを使って家で焼き肉という瀧井くんの感覚が好き。
しかも赤いウィンナーを焼いているところもグッときた。
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不安だらけの気持ちを落ち着かせるには? 5話
あらすじ
瀧井くん(小関裕太)がよく行くコンビニの店員をしている冨田さん(徳永えり)。
現在就職活動中。
かつては会社員だったが、辞めてしまった。
実家で暮らしながらコンビニの店員として食いつないでいる。
30代半ばだというのに、なかなか安定した就職先が決まらない自分がまわりに比べて劣っているようで企業に面接へ行くたびに不安と憂鬱が襲ってくる。
ある日のバイト帰り、常連の瀧井くんとすれ違ったが何も反応なし。
前からちょっといいなぁと思っていたけれど、向こうにしてみれば眼中にも入っていないただのコンビニ店員だったことを思い知らされる。
なんとなくモヤモヤしているときに見つけたのが、「スナック キズツキ」。
ママのトウコにホットココアを注文したところ、できあがるまで時間がかかるからと、しりとりを提案される。
それが単なる単語のしりとりではなくて、ちょっとした文章を創作してつないでいくしりとり。
トウコに乗せられ、冨田さんはいつの間にか今抱えている不満や不安を口にしていて……。
レビュー
「何かあったらどうする?」「私たちの老後ってどうなっちゃうんだろう」
と妹の前で不安を口にする冨田さん。
そんな妹からは、幼い子どもが2人いるけれど、もうすぐ離婚して実家に戻ろうとしていると告げられる。
その話を聞いて、安心できることなんて何ひとつないんだなぁと感じた冨田さん。
トウコの店で停電になったときにそのことを思い出す。
そして、冨田さんは自分の就活について振り返ってみる。
自分には何もない、安心材料もない。
だから就活しているのは何か安心感を求めてやっていたはずだった。
でもトウコとしりとりをしているうちに、安心感ではなくてただ日々を生き延びるための就職でも価値があるのかもしれない。
そして自分には何もないと思っていたし、就活が長引くたびにそれを実感していた。
けれど、この世に生まれてきたからには、それだけでもちょっと意味があることなのかも。
と考え方が変わった気がする。
そうなんだよね。
生きていると不安だらけで安心できることって実はあんまりない。
焦るし、人と比べると何もない気がしてしまうけど、生まれただけで社会に影響があるはず。
その影響が全然大きくなくても、たとえ自己満足でも、行動すればほんの少しでも何か変化が生まれるのかも。
と今回の話を見ていて励まされた。
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人生にモヤっとしたら自分で自分の機嫌を取るもの? 6話
あらすじ
サトちゃん(塚地武雅)の妹の香保さん(西田尚美)。
京大卒の夫と結婚し、高校生の息子も晴れて京大に合格した。
これまで息子のサポートをしてきたから、肩の荷が降りた思いだった。
それで、母(丘みつ子)と温泉でも行こうかと思っている話を息子にする。
箱根にしようかとちょっとした箱根の知識を話そうと思ったら息子に「それなら知ってる」と話を遮られた挙げ句、「お母さんより知らないことないから」と言い放たれるのだった。
そして、息子の京都での一人暮らしのために、築浅物件がいいというリクエストに叶う物件を探していた香保さん。
その矢先、息子の合格祝いに一家で義両親と食事へ行くことに。
すると義父から知り合いがいい物件を知ってるからそこに住めばいいという。
息子に確認するとどこでもいいという返事。
築浅がいいと言われて必死に調べていた私はなんだったのだろうとなんかモヤモヤする香保さん。
ある日の朝、出勤前の夫に義母の誕生日プレゼントの相談をすると、香保さんが選んだものなら気にいるから何でもいいというつれない返事。
それで買い物に行くと、荷物もあってモヤモヤしていたのか、お惣菜屋の店員・安達さん(平岩紙)に嫌味のようなお願いをしてしまう。
その帰りに学生時代の友達・裕子(堀内敬子)とばったり会う。
息子の京大合格を祝ってくれたけど、結局、私ってなんだろう。学生時代は自分が何でもできた気がして楽しかったのに……。
そんなときたまたまスナックキズツキの前を通ると、ママのトウコ(原田知世)から少し休んでいかないかと誘われ……。
レビュー
最初は息子が京大に合格して鼻高々だった香保さん。
でも支えてきた息子からは素っ気ない態度を取られたり、せっかく調べてたのに義父が息子の家を勝手に決めるし。なんかモヤモヤ。
友達も褒めてくれるけど、自分のことではないし、私自身の価値って?
学生のときはあんなに謳歌してたのに……。
と思うのもわからなくない。
そんなことをトウコに愚痴ってしまったら、今回はユーロビートに乗せてのダンスタイムが。
それで香保さんはスッキリするのかな?
と思ったら、かなり発散していたようでホッとした。
たまには自分のことだけに向き合う時間も必要だよね。
そして帰りに息子と偶然会って何気ない会話をするシーンが印象的。
母の機嫌がいいと息子に伝わるんだなぁと思った場面。
親子関係に限らず、自分の機嫌はきっと人に伝わるもの。
モヤモヤしたことが溜まっているときは、自分の機嫌をとるのも重要だなと感じた。
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好きなことなんて忘れていたヨシ子さんが見つけたワクワクとは? 7話
あらすじ
サトちゃん(塚地武雅)と香保さん(西田尚美)のお母さんがヨシ子さん(丘みつ子)。
息子のサトちゃんは実家にいるものの、子育ても終わり、5年前に夫も亡くなった。
そのため自分のために使える時間が増えた。
でもサトちゃんの夕食の準備をして、つい帰ってくる時間を待って一緒に食事をとろうとしてしまう。
それで、息子からは「待ってなくていい」と言われるけど、それもなんだか寂しい。
香保との旅行の話をすると、そうやって友達と出かけてくればいいんだ、自分に気を遣わずもっと外に出ていいんだからと言われてしまう。
そんなある日、お節介の自治会長から近くに引っ越してきた婦人の娘が独身だから、サトちゃんにどうかと妙な縁談を持ちかけてきた。
寝耳に水だったものの、その婦人の感じがよかったのでちょっとその気になってしまった。
そのことを香保に電話で相談すると、兄が結婚すればようやく羽を伸ばして好きなことができるからと背中を押される。
息子も娘も自分の好きなことをすればいいというけれど、いざ自分のための時間ができたら何をすればいいかわからない……。
そんなときに見つけたのが「スナック キズツキ」。
初めてのスナック、久々の外食に少しだけ心がワクワクするヨシ子さん。
ママのトウコ(原田知世)が酒屋の配達からもらったシャンソンのチケットを見せると、ヨシ子さんは昔シャンソンが好きだったこと、子育て中の夜中にこっそり小さい音で聴いていたことを話し出す。
あの頃は、子育てに一生懸命で時間があったらやりたいことはいっぱいあったはずなのに、今のようにいざ時間ができると何をしたいのか思いつくことがない。
それなのに息子と娘から好きなことをしていいと言われてばかりで、モヤモヤしていることをトウコにこぼすと……。
レビュー
今回は原作にはないエピソード。
ヨシ子さんはシャンソンのチケットのおかげで、すっかりトウコに気を許して、日ごろ感じていたちょっとした悩みをぶつけるのだけど。
それで例の如くトウコさんに乗せられ、即興の歌詞でシャンソンを歌うことに。
でも、それでようやく愚痴を吐き出せたみたい。
ただ私としてはシャンソンももちろんだけど、オニオンスープを飲んでるときのヨシ子さんもうれしそうに見えた。
外食が久々と言っていた上に、初めてのオニオンスープ。
スープにパンを入れて、その上にたっぷりのチーズ。
それをオーブンで焼いてから食べるスープ。
あつあつだけど、それをフーフーしながら一口飲み干しただけで、今日あった嫌なことを吹き飛ばしているように見えた。
それでシャンソンを歌ったから、よりスッキリしたんだと思う。
例の婦人からの連絡に、トウコさんからもらったシャンソンのコンサートを誘ったりしちゃって。
家でレコード探してるときの表情も楽しそうで見ている私もうれしくなった。
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子育て、仕事でたまったイライラにはタップダンスがいい? 8話
あらすじ
息子が京大に合格した香保さん(西田尚美)の高校時代の同級生が南さん(堀内敬子)。
2人は道端でばったり会う。
南さんは香保さんの息子が京大に行ったことを知っていて、おめでとうと盛り上がるが、家に帰ると家事も何も手伝ってくれず文句だけは言う娘や息子にいらだつ。
そして彼女たちにあれこれ小言を言うと、作った夕飯もろくに食べずに部屋にこもってしまった。
そんな子どもたちの世話で精一杯の生活に嫌気がさす。
だから自分を癒すためにネイルをしてみようとするが、干からびていて使えない。
翌日、南さんは介護職の仕事のため、高齢者の家を訪ねると電話中だと怒られ、台所にたまった食器を洗おうとするも洗剤をたくさん使うなと怒られ、自分の存在は何なんだろうという気持ちになる。
帰り道、介護者の自宅でトイレを借りられないルールのため、トイレを借りられそうなところを探していると「スナック キズツキ」が目に入る。
お店に行って早速トイレを借りると、注文していたアイスコーヒーがまもなくできあがりそうだった。
トイレが借りられない話のついでにママのトウコ(原田知世)に愚痴をこぼすと、試作品のシュークリームが出てきた。
久しぶりに外食したこととコーヒーとシュークリームがおいしくてなんだか涙が出てきてしまった南さん。
すると、トウコに靴のサイズを聞かれ、あれよあれよとタップダンスをすることになり……。
レビュー
家族のこと、仕事のことなど日常の些細なイライラがたまっている南さん。
彼女と似たようなポジションを経験したことがないので、もし自分も同じ立場だったら……という目線になってしまうけど、そうであれば共感できる。
しかし逆に娘の視点に立って、親にそうやって負担をかけていたのかも……とも考えてしまったし、見ていて苦しい回だった。
しかも南さんは介護者の家に訪問してお世話する仕事。
仕事で来てるし、気を遣っているのに、あれこれ文句言われてしまう。
家でちょっと嫌なことがあった日に限って、それって。やるせないよね。
ちなみに、南さんはイライラすると地団駄を踏みたくなるという。
そこへトウコさんがタップダンスの世界へいざなう。
たしかにタップダンスは地団駄に近い動きかも。
このドラマのいいところって、その回のメインキャストにやるせないこととかイライラしたことがあっても、トウコさんが楽器の演奏とか歌とかダンスとかに誘うから後味がいいんだよね。
ちなみに今回南さんを演じていた堀内敬子さんは、劇団四季出身。
だからなのか、まったくタップダンスをやったことないという南さんだったけどやっぱり動きが美しかった。
ラストも印象的。
仕事から帰ったら娘たちのご飯の支度を絶対していた南さん。
でも、タップダンスでどうでもよくなって作るのをやめた。
そして、娘には「なせばなる」とひと言残して去っていったのがおもしろかった。
作品概要
タイトル:『スナック キズツキ』
放送日:2021年10月8日〜12月24日
放送時間:24:12〜24:52
放送局:テレビ東京
出演:原田知世、浜野謙太、成海璃子、平岩紙、塚地武雅、小関裕太、徳永えり、西田尚美、堀内敬子、八嶋智人
原作:益田ミリ
監督:筧昌也、湯浅弘章
脚本:佐藤久美子、今西祐子
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kizutsuki/
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