2024年6月30日にテレビ朝日で放送したスペシャルドラマ『ブラック・ジャック』。
手塚治虫原作の名作を、高橋一生が主人公のブラック・ジャックを演じ、実写化。
この作品のあらすじ・レビューを書いた記事です。
あらすじ
海外にいた有名なジャンキー・古川駿斗(味方良介)は、幻覚の影響で事故を起こし、そのせいであらゆる臓器を移植しないと生きられない瀕死の状態に陥った。
彼の父である日本の法務大臣・古川正文(奥田瑛二)は、息子の海外での不祥事を隠したいが、命も助けたい。
それで闇で臓器移植できる人物を探し、見つかったのがブラック・ジャック(高橋一生)。無免許だが卓越した医療技術を持つ医師。
治療費は莫大だが、彼に手術を依頼することにする。
一方、研修医の長谷川啓介(井之脇海)は、自分のせいで店のチンピラと暴力沙汰になってしまい海外の刑務所に入っている後藤一馬(早乙女太一)の出所を心待ちにしていた。
もうすぐ帰れるという便りが届き、喜んでいた。
しかし後藤の代理人である弁護士の伊丹治郎(山中崇)から、彼が刑務所で自殺を図り、亡くなったと伝えられる。
それが事実か確かめるために骨壺まで取り寄せたという。
ショックを受けるとともにそんなはずはないと後藤の死を受け止められない長谷川。
そしてふと骨壺を開けてみると、馬の形をした彫刻が埋め込まれた水晶のようなものが入っていた。
同じようなものを飾っていたアンティークショップを見つけ、それを作った人を店主に教えてもらうと、店に入る前にすれ違った人物だと言う。
それがブラック・ジャックと助手のピノコ(永尾柚乃)だった。
後藤の骨壺に入っていた彫刻を作った作者ではないかと長谷川はブラック・ジャックに尋ねるが否定される。
そのため彼を追うと、事故で鉄骨に挟まれた少年をあり得ない手法で助け、「ブラック・ジャック」と呼ばれているのを聞く。
そして彼が噂の、天才的な腕を持つが法外な料金で治療する無免許の医師だと悟る。
どうしても後藤の死の手がかりがほしい長谷川は、アンティークショップの店主に住所を聞き、ブラック・ジャックの家へ。
彫刻のこと、無免許の医師であることも質問するがまたもはぐらかされてしまう。
すると伊丹が、何者かの力で後藤は臓器提供のため自殺を図ったことにされたのではないかと長谷川に語り出す。
これから詳しく調査しようとしていた矢先に、伊丹が行方不明になってしまう。
同じ頃、顔面が獅子のような皮膚に変形する獅子面病の患者・えみ子(松本まりか)が夫の六実(宇野祥平)とともにブラック・ジャックのもとへ訪れる。
「治せる」とブラック・ジャックは言うが、その代わり治療費は2億円だと提示する。
それに六実が渋ったせいで治療の話は流れる。
その態度を見て、えみ子はある覚悟を決める。
実は以前から安楽死を請け負っているドクター・キリコ(石橋静河)に相談をしていたことを実行しようと決めたのだ。
ちょうどえみ子がキリコと会う日、ブラック・ジャックはえみ子を説得しようとピノコを彼女の家へ送り込んでいた。
しかし、そこへキリコがえみ子のマンションに入っていくのを見たブラック・ジャックは何かを察し……。
レビュー
序盤に鉄骨に挟まれた少年を助けるところでブラック・ジャックの腕前や彼がお金を請求する手法を見せて、彼の性質を紹介。
古川駿斗と後藤一馬の臓器移植と獅子面病のえみ子、この2つの話をメインにした構成でストーリーは進んでいく。
そして、物語は長谷川の目線で話が進み、最初、医師免許を持たないのに法外な治療費をせびるブラック・ジャックは悪の存在と印象づける。
しかし実は情に訴えられてお願いされた治療費は受け取らなかったり、救えなかった患者を弔っていたりと心ある医師ということがあとからわかる。
そういう形でブラック・ジャックのダークヒーローっぷりが明らかにされる。
その流れで印象的だったのは、えみ子の顔が好きで必死に獅子面病を治そうとしていた夫の六実。
でも治療費に2億円かかると言われて、即決できない彼。
ということは、妻の顔に2億円の価値を見出していないということ。
本当に助けてほしければ、金額なんて気にせずに必死に治療を請うではないか……というブラック・ジャックの主張が胸に響いた。
確かに助けてほしければ、何がなんでも……という発想になると思う。
しかも、夫が2億円にたじろぐその態度を見て、えみ子が病気の苦しみに耐えられなくなるし。
また、そのときのえみ子演じる松本まりかさんが鬼気迫る演技で。
他人はそれくらい耐えられることだというけれど、もう精神的に限界……というのが伝わる苦しみに溢れた芝居だったから、なおさら夫の不甲斐なさが印象に残った。
あとは長谷川がずっと気にしていた後藤の話も意外な結末が。
長谷川も後藤もファンだったミュージシャンの琵琶丸(竹原ピストル)。
長谷川のもとに何者かが彼のライブチケットを送ってくるシーンが。
最初、ブラック・ジャックの仕業だと思ったけど違った。
「そんなことありえるの?」という送り主だったから驚いたけど、劇中で説明されたからくりは案外単純だった。
ただそのからくりもブラック・ジャックがはぐらかすから本当のところはまだ謎。
でもそんな風にミステリアスな余韻が残る結末で心地よかった。
ただね、でもね、最後はあんなオチなんて……。
けれど、ブラック・ジャックの生き様と信念がわかるラストシーンで、早くも続編を期待してしまう。
作品概要
タイトル:テレビ朝日ドラマプレミアム『ブラック・ジャック』
放送日:2024年6月30日
放送時間:21:00〜22:54
放送局:テレビ朝日
出演:高橋一生、石橋静河、永尾柚乃、井之脇海、松本まりか、竹原ピストル、味方良介、山内圭哉、千葉哲也、奥田瑛二、早乙女太一、宇野祥平、山中崇、橋爪功、大塚明夫ほか
原作:手塚治虫
監督:城定秀夫
脚本:森下佳子
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/bj/
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