『THE 有頂天ホテル』みたいな後ろ向きな生き方に明るく喝を入れるドラマが今後必要?

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THE 有頂天ホテル』を視聴。

一度観たことがあって、そのときは「わちゃわちゃしてるな」という印象で登場人物の各エピソードの記憶が薄かったのだけど、見返してみたから、喜劇だけど、各キャラクターのバックグラウンドは意外と波乱に満ちていた。

副支配人の新堂(役所広司)はバツイチで、お客として元妻・由美(原田美枝子)に偶然再会する。

食えない舞台演出の仕事を続けてたせいで別れたので今更転職したとは言えず、この日、授賞式が行われる「マンオブザイヤー」に選ばれたと嘘をつく。

しかし由美の夫こそがマンオブザイヤーに選ばれた堀田(角野卓造)で、その堀田は、たびたびホテルに出入りするコールガールの女・ヨーコ(篠原涼子)と関係があり、ホテルで再会。

「クネクネダンス」と称する堀田の恥ずかしい踊りの写真をヨーコが携帯で撮影・保存してあることを知り、マンオブザイヤーを取り消されるのではないかと必死に削除を求める。

そのヨーコがホテルをうろつくと、失脚寸前の政治家・武藤田(佐藤浩市)と出会い、なぜかヨーコを気に入った武藤田は彼女と行動を共にするようになるが、今後のことである決断をし、大騒動になる。

その武藤田の愛人だった過去を持ち、彼との間にできた子供を育てているシングルマザーで客室係のハナ(松たか子)は、部屋をめちゃくちゃに汚す、けれど高級品ばかり持っている客室を掃除中、ほんの出来心から、部屋にある装飾品や洋服を着てしまう。

そんなことをしていたら、その部屋に宿泊している客と人違いされ、「親父と別れろ」と言い出してきた男(近藤芳正)とラウンジで話し合うことになる。

ハナの同僚である睦子(堀内敬子)とウエイターの丹下(川平慈英)は付き合っているが、あるくだらないことで揉めている。

そしてみんなの同僚で、歌手になる夢を諦め田舎に戻るためこの日で辞める予定だったベルボーイの只野(香取慎吾)。しかし人手が足りないとアシスタントマネージャーの矢部(戸田恵子)から頼まれ、1日だけベルボーイとして復帰することになる。

そこで田舎の幼なじみ・なお(麻生久美子)と再会。夢を諦めたことを伝えると、その日泊まっている大物演歌歌手の徳川膳武(西田敏行)に売り込みに行けばいいと言われ、どうにか彼の部屋に潜り込むことは成功したものの……。

ほかにも、ホテルのイベントのために呼んでいた芸人たちの楽屋にあった白塗りに興味を持って、塗らせてもらうものの落とす機会をことごとく逃す支配人(伊東四朗)。

その芸人たちの中にいた桜チェリー(YOU)は歌いたい歌があるのに、社長(唐沢寿明)のパワハラセクハラに怯え、なかなかうまくいかない。

小さな文字しか書いたことがない筆耕係の右近(オダギリジョー)は新堂から頼まれ、ホテルで使う垂れ幕の文字を書くことになるが、大きい文字ゆえ、なかなかうまく書けない。

大晦日の夜に起きたこれらの話が、それぞれ個別に発生しているように見せかけて、どこかで繋がるようにできている作品。

冒頭にも書いたけど、人の勘違いや行き違いで笑いを取るから、そのおもしろさに誤魔化されて、キャラクターの背景を軽く受け流しがちだけど、登場人物たちの抱えているものが結構重い。

新堂はバツイチで、すでに別の人と結婚している元妻に再会するし、その元妻の夫はコールガールと浮気してるし、武藤田は汚職で崖っぷちだし、一見なんてことないシングルマザーだと思ってたハナはその武藤田の元愛人。只野は長年追い続けていた夢に破れて田舎へ帰ろうとするし、彼の幼なじみのなおも、フライトアテンダントの夢を叶えたふりをしているけど、実は……。

という具合に、どの人物も映画の1本できそうな波乱な人生。

一応ストーリーは、なんだかんだあっても、人に何を言われようが「自分が思う通りに好きに生きればいい!」という前向きなメッセージが込められているのだけれど、登場人物たちのバックグラウンドがこれほどまでに辛いものだとは最初観たときには恥ずかしながら気づけなかった。

しかも、誰かしら当てはまるように、世代や性別、シチュエーションもバリエーションに富んでいる。

一方、今放送しているドラマは、ストレートだったり、シリアスなテイスト、あるいはコミカルな中に説教しているシーンを入れて直截的にメッセージを伝えている。

けれど、こういうネガティブな人生に明るく喝を入れる『THE 有頂天ホテル』みたいな手法で人生訓を伝えるようなやり方も、今後アリなんじゃないかなと思う。

今期のドラマ、サスペンスもの(本当は好きだけど)の作品が多すぎて食傷気味だったので、なおさら『THE 有頂天ホテル』が新鮮で斬新に見えたのよね。

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