松岡茉優が一番不憫に思えた『万引き家族』

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2018年公開映画の話題作のひとつ『万引き家族』。

父(リリー・フランキー)、妻(安藤サクラ)、息子(城桧吏)と妻の妹(松岡茉優)がおばあちゃん(樹木希林)の年金目当てに彼女の家に転がり込む。

ある日、父と息子が(万引き前提の)買い物帰り、家から締め出されている女の子(佐々木みゆ)を見つけ、冬であることもあり、かわいそうに思った父が家に連れてきてしまう。

一度連れ戻そうとするも、女の子の両親と思われる夫婦が大声で喧嘩をしていて、しかも「産みたくて産んだわけじゃない」という声まで聞いてしまい、連れて帰ってくる。

そこから女の子も一家のひとりとして暮らすことになるが、ある日、その子の捜索願が出され、マスコミにも連日取り上げられるように。

存在がバレないようにしながら、でも家族としては幸せな日々を送っていた。しかし、突然、息子のある行動でその均衡が崩れてしまう。

 

予告とかでなんとなく話の流れや結末がわかってしまいそうな作品だけど、問題の本質はそこではない。

血縁だけが家族なのか、人の心を救っているのに、罪になってしまう現実……。

現代社会での問題点や登場人物たちの心の動きなどいろんなことが読み取れる良作。

ただ、私は結末まで観て、一番不憫に思えたのは松岡茉優が演じた妻の妹・亜紀だった。

以下ネタバレ含むので、読みたくない人は別のページへ。

 

 

 

『万引き家族』というタイトルだけど、亜紀自身は万引きはしていない。一応働いているのだが、何の仕事をしているかというとJK見学店の女の子。

家に帰ればおばあちゃんと姉一家とも仲良く暮らしている亜紀だが、そもそもこの家族は擬似家族。

亜紀には本当の父、母、妹がいて、表向き、高校卒業後、海外留学していることになっている。

でも現実は違うわけで、家にいない娘を海外留学していることにするような親だから、その見栄っ張りで娘に過度の期待をする家族から逃げ出したくて亜紀は家を出たのではないか、そして反抗心からJK見学店で働き始めたのではないかと推測している。

また亜紀は実妹の名を源氏名にして働いていることから、自分に比べ出来のいい(もしかしたら両親の期待に応えてる?)妹への嫉妬心もあり家を出たり、わざと妹の実年齢である高校生のふりができるJK見学店で働いているのかもしれない。

そして、なぜおばあちゃんの家に来たかは、物語の終盤に「おばあちゃんから誘われて」と言っていたから、家を出たかったタイミングに、声をかけられたとも考えられる。

で、結末は擬似家族の妻が捕まり、みんながバラバラになるわけだけど、そこで、亜紀は初めてほかの家族の素性を知ることになる。

亜紀が妹のふりをしていた姉一家自体、家族ではなかったこと、そして万引き以上の犯罪を犯していた過去を抱えていたこと、おばあちゃんが自分の実家にお金をせびっていたこと。もしかしたらそもそも、おばあちゃんと実家との因縁さえも知らなかったのかもしれない。

それを警察で初めて聞かされ衝撃を受ける亜紀。

亜紀は事情を話してもらっていてもおかしくないのにまったく知らなかった。

信頼関係ができていたと思っていたのに話してもらえなかったことのショックと、その事実の内容が内容なだけに、そんな人たちと一緒に暮らしていたのかというショックと……。

この警察のシーンなんて本当にごくわずかなんだけど、いろんな感情が入り混じった亜紀の表情が忘れられない。

もちろん、息子、そして連れてきてしまった女の子の事情を知ると不憫なんだけど、事の重大性がまだわかっていないだけ救われる。

だから、何も知らず、知らされず、ただ実の家族への反抗心(自分自身へのやり切れなさもあったのかもしれない)から始めた家族ごっこがこんな結末を迎えるとは思っていなかった松岡茉優演じる亜紀が、私は一番不憫だったなと思ってしまった。

と、言っておきながらまた別のタイミングで観てみたらまた違う感想がわいてきそうだけど。

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